樹状細胞ワクチン療法

当院で行う樹状細胞ワクチン療法

樹状細胞ワクチンは、患者さんの体の中に既に存在する、がん抗原特異的T細胞(CTL)を刺激し、増加させる目的で行う免疫療法の一つです。

アフェレーシス(成分採血)で採血した白血球中の単球をIL-4とGM-CSFを用いて樹状細胞に分化させ、これに患者さん自身のがん細胞から抽出した蛋白質や、人工的に合成したがん抗原ペプチドを加えて、樹状細胞ワクチンを作成します。

樹状細胞ワクチンを作成する際、特に有用な材料となる患者さんの新鮮な腫瘍組織は手術の時にしか手に入らないこと、また、免疫療法における最新技術であるネオ抗原ペプチド樹状細胞ワクチン療法に必要な遺伝子検査のために必須の検体でもあることから、是非手術の前にご相談ください。

当院で用いる合成ペプチドは、学会や医学論文でその有用性が証明されたペプチドです。現在使用しているものに、ミルテニーバイオテク社のロングペプチドや、オンコセラーピー社のオンコアンチゲンペプチドがありますが、今後は、最も強力なCTLを誘導できるネオ抗原ペプチドを使用する例が増えてくると思われます。

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当院では、免疫反応が早く確実に体内で誘導されるように、樹状細胞ワクチンを投与する時は超音波ガイド下で、鼠径部リンパ節皮質内へ直接注射します。

樹状細胞ワクチンを数回行なった後に、皮内テストで体内にCTLが十分誘導されたことを確認し、末梢血からCTLを分離採取して、活性化増殖させた「樹状細胞ワクチン感作後活性化リンパ球」を点滴移入する場合もあります。

樹状細胞ワクチンのCTL誘導のメカニズム

樹状細胞ワクチンのCTL誘導のメカニズム

樹状細胞ワクチン療法のエビデンス

1996年、米国スタンフォード大学のHsu FJ博士らによって、自己がんタンパクで刺激した樹状細胞ワクチンに関する世界初の報告が行われました。4人のB細胞悪性リンパ種の患者のうち、1例で腫瘍の完全消失、1例で部分縮小、もう1例が血液検査上の完全腫瘍消失、という驚くべき結果でした。
その後世界中で多くの臨床試験が行われ、米国では2011年に前立腺がんの治療法として樹状細胞ワクチンが承認されました。

最近の我が国からの論文としては、東京女子医科大学消化器外科の清水公一先生らが、2012年と2014年にそれぞれ胆管がんと肝臓がんにおいて、自己がんタンパク樹状細胞ワクチンと活性化リンパ球療法による術後の再発予防での有用性を示されています。

新規ペプチドを使った樹状細胞ワクチンの実施状況

概 要

福岡がん総合クリニックでは、自己腫瘍の凍結保存がない場合の代替的がんワクチン療法として、ペプチド樹状細胞ワクチンをおこなっています。
これまで使用してきたペプチドは、CEA, MUC-1, HER2,などのHLA-A2やHLA-A24の白血球型抗原の方に限定した汎用がん抗原ペプチドと、ミルテニーバイオテク社の開発した、NY-ESO-1, MUC-1, WT-1, Mage3といった多くのがんに発現する汎用抗原ペプチドを100種類以上合わせたロングペプチドを、樹状細胞に加えるワクチンの材料として使用してきました。

この度、従来のがん抗原ペプチドに加えて、中村祐輔先生(がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長・内閣府戦略的イノベーション創造プログラムプログラムディレクター)が顧問を務められているオンコセラピー・サイエンス社から、オンコアンチゲンのペプチド特許の使用許可を得、オンコアンチゲンペプチドを使うことが可能となりました。
オンコアンチゲンペプチドはがんの詳細な遺伝子研究に基づいて発見されたもので、がん細胞の増殖に関する蛋白質に由来するペプチドです。白血球の型の検査が必要で、白血球の型とがんの種類によって使えるペプチドが異なります。

更に、最近進歩著しいがん細胞の遺伝子解析をもとに見つけ出すネオアンチゲン(新生抗原)は患者さん一人一人の個別のがん細胞の産出する蛋白質の断片であり、遺伝子の解析結果をもとに、完全に個別化して合成されたペプチドは樹状細胞ワクチンを作成する材料としては究極の材料といえます。

昨年がん治療の新旗手として華々しく登場した免疫チェックポイント阻害剤の研究で、ネオアンチゲンの発現が多いほどこの薬剤の効果が高いことが分かりました。

免疫チェックポイント阻害剤はCTL(がん細胞を傷害する強力なTリンパ球)に作用してその攻撃力を下支えする働きをするものですが、CTLはネオアンチゲンの種類の多さと相関性があるわけで、CTLが体内にたくさん誘導されていれば免疫チェックポイント阻害剤の効果が相関的に高くなるのは合点のいく事実でした。

従ってネオアンチゲンペプチドを刺激材料に用いた樹状細胞ワクチンは、患者さん個別のがん細胞だけがもつ唯一無二の特異的なCTLを体内に誘導できるので、完全に個別化された精密ワクチン療法といえます。

当院では、2017年秋、このネオアンチゲンペプチドを用いた究極の樹状細胞ワクチン療法実施への取り組みをスタートさせました。

当院のペプチド樹状細胞ワクチンで使う新規ペプチドのまとめ

1:Long peptides

ロングペプチド;Miltenyi Biotech(ミルテニー バイオテク社)製
*既にがんワクチン療法で世界的に臨床試験が進んでいる以下の蛋白のうち、ペプチドワクチンとして働く可能性のあるロングペプチド(アミノ酸数15程度)を100種類以上合成し、混合したペプチドのプール。
NY-ESO-1, Mage3, MUC-1など

2:Oncoantigens peptides

オンコアンチゲンペプチド
世界的ながん遺伝子研究者である中村祐輔先生の研究室と先生が顧問をされているオンコセラピー・サイエンス社が開発したペプチド(HLA-A2402, HLA-A0201の患者さんに限定される)

3:Neoantigens Peptides

ネオアンチゲンペプチド
まず、患者さん一人一人の個別のがん細胞の産出する蛋白質の情報を、手術や生検で得られた新鮮腫瘍組織を材料として遺伝子解析にて割り出す。結果得られた情報をもとに合成される、完全に個別されたペプチド