樹状細胞ワクチン療法

究極の個別化樹状細胞ワクチン療法

樹状細胞ワクチンは、患者さんの体の中に既に存在する、がん細胞を強力に攻撃できるがん抗原特異的T細胞(CTL)を刺激し、増加させ、主に癌の再発予防と治療の目的で行う細胞療法の要となる治療法です。

樹状細胞ワクチンは、アフェレーシス(成分採血)で採血した白血球中の単球をIL-4とGM-CSFを用いて樹状細胞に分化させ、これに患者さん自身のがん細胞から抽出した蛋白質や、人工的に合成したがん抗原ペプチドを刺激材料として加えて、作成します。

当院で用いる合成ペプチドは、学会や医学論文でその有用性が証明されたミルテニーバイオテク社のロングペプチドや、オンコセラーピー社のオンコアンチゲンペプチドがありますが、現在は、最も強力なCTLを誘導できるネオアンチゲンペプチドを主に使用しています

患者さん一人ひとり個別のがん細胞の産出するタンパク質の断片をネオアンチゲンと言い、この異常なタンパク質を産出している遺伝子の変異を患者さんの腫瘍の遺伝子解析により見つけ出し、その結果を基に人工的に合成したタンパク質がネオアンチゲンペプチドです。 

このネオアンチゲンペプチドを刺激材料に用いた樹状細胞ワクチンは、患者さん毎に異なる特異的なCTLを体内に誘導できるので、完全に個別化された精密ワクチン療法といえます。

ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン施行までの流れと科学的根拠

準備段階

STEP
がん細胞と正常細胞の全遺伝子解析を行い、免疫反応を強力に誘導できるネオアンチゲンを予測する
STEP
ネオアンチゲンペプチドの合成とワクチンの作成
  • 遺伝子解析によって分かったネオアンチゲンペプチドの内、最も効果を期待できるペプチドを選択し、それをコスモバイオ社に委託し人工的に合成する。合成には2〜3週間を要する。
  • 合成費用は選択するペプチドの数により個人差があり、一度合成すれば、治療回数にして10回分に使用できる。
STEP
治療用の材料となる白血球の採取と保存
成分採血室
  • 体外循環式採血機器で白血球だけを選択的に採取し、特殊薬剤で処理して当院クリーンルーム内のディープフリーザーにて冷凍保存する。
  • 成分採血の所要時間は2時間程度。
STEP
白血球中の単球をネオアンチゲンペプチドで刺激してワクチンを作成する
  • ディープフリーザーに保存中の白血球から分離した単球にコスモバイオ社に委託合成したネオアンチゲンペプチドを加えて当院クリーンルームにてワクチンを培養作成する。
  • 培養に要する日数は5〜7日。
クリーンルーム

施行

STEP
樹状細胞ワクチンの施行

ネオアンチゲン樹状細胞ワクチンの科学的根拠について

 ネオアンチゲンは遺伝子変異の蓄積によりがん細胞に発現するに至った異常なタンパク質の断片で、それを異物と見做して攻撃・排除する役割をもつ我々の体内に存在するTリンパ球にとっては強力且つ決定的な目印となるものです。

 ネオアンチゲンが注目されるきっかけになったのは、2011年からその効果が発表され始めたオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤の効果に、ネオアンチゲンに反応するTリンパ球が深く関与していることが明らかになったことでした。
 2015年にはCarrenoBMがサイエンス誌にネオアンチゲン樹状細胞ワクチンの効果報告を初めて行いました。
 2017年には米国のOttPAや、コロナワクチンのmRNAワクチンで一躍名を馳せたドイツのがん治療研究所BioNTech社のSahinUがネイチャー誌にネオアンチゲンワクチンの臨床試験の結果を発表し、その後もNatureMedicineやCELL、CancerCELLといった医学雑誌に、ネオアンチゲンを応用した治療が次々と報告されています。
 現在、欧米ではネオアンチゲン単独、あるいは他の治療との併用での数百に及ぶ臨床試験が行われており、ネオアンチゲンワクチンは世界で最も期待されているがんワクチンです。

 このネオアンチゲンワクチン療法の実施が従来のワクチンと比べて極めて難しいのは、患者さん個々にがん組織を検体とした遺伝子解析を行い、白血球のHLAタイピング検査をして、更には患者さん個々に違うオリジナルのネオアンチゲンペプチドを合成しなければならない点です。
 当院ではこれら数々のハードルを乗り越え、できるだけ費用負担が少ないように工夫しながら、2017年からこのネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法を開始し、2020年7月には、わが国で初めての当該治療の有効症例を英語論文で発表し、以来、当該治療の有効症例を発表し続けています。

→ 当院の発表論文について

ネオ抗原樹状細胞ワクチン療法費用 

費用は、遺伝子解析やペプチド合成、免疫細胞の採取と保存等、準備段階で掛る費用と、ワクチンの6回施行と治療後の免疫学的効果判定(エリスポット検査)を含めて総額およそ200~230万円となります。 

尚、6回のワクチン療法で、材料のネオ抗原ペプチドや成分採血で採取保存した白血球を使い切ることはなく、残りの材料は当院で2年間は凍結保存できるため、採血無しで10回ほどの追加的ワクチン療法やワクチン後特異的リンパ球療法を継続することが可能です。(継続の場合の1回毎の治療費:¥165,000)

樹状細胞ワクチンを作成する際、特に有用な材料となる患者さんの新鮮な腫瘍組織は手術の時にしか手に入らないこと、また、免疫療法における最新技術であるネオ抗原ペプチド樹状細胞ワクチン療法に必要な遺伝子検査のために必須の検体でもあることから、是非手術の前にご相談ください。