がん治療との向き合い方

Q1 「がん治療と向き合う」には

A1 

手術で治る可能性の高い早期がんは医者に任せておけば良いでしょう。しかし、手術できないほど広がっていたり、他の臓器に多数転移した進行がんや、手術と抗癌剤をしても再発したがんについては、治療が長期にわたる上に、完治する可能性も少なくなるため、当事者のみでは、治療にどう向き合うかは非常に難しい問題となります。複数の医師や周りの意見も参考にし、多少の軌道修正をしながら向き合って行けばよいと思います。

ただ、がんと向き合うと考えるとエネルギーも要りますが、がんも身の内なので、開き直って、「がんと長く付き合う」と言う考え方もあるのではないでしょうか。

Q2 標準治療って何ですか?

A2 

がん治療先進国である日本であれば、がん拠点病院を中心にした地域の中核病院で、その時点において医学的根拠のはっきりした標準治療(各種のがん学会がガイドラインを定期的に発表している)を行うことが原則と言っていいでしょう(標準治療と云っても年々変わって行きます)。

しかし、その標準治療通りにしなければいけないとか、その方が最も長生きできるというわけではありません。長生きできる確率が、なにもしないよりは高いとは云えるでしょう。しかし、標準治療は、がんの「縮小」とか「長生き」を第一の目的に行われるため、生活の質の問題は、二の次になります。標準治療を受ける、受けないについては、患者さん自身が決めることができます。多くの場合は、「がん治療を専門とする医師に標準治療を任せる」ことになりますし、標準治療を治療の中心に据えることは間違いではありません。しかし、標準治療には限界もあり、突然、治療の終了を伝えられることもあります。

予想される余命も考えた上で、自らが納得する標準治療以外の治療を考えておく必要もあると思います。高度進行の再発がんであれば、がん治療を専門とする医師であっても悩むものなのです。

Q3 代替医療をどう考えれば良いのですか?

A3 

「治療」については、標準治療が中心であって良いのですが、それだけでは不安が残ります。特に、副作用の多い抗がん剤治療のみでは、次第に効果が少なくなり、体力的にも長くはつき合えないと思うのが普通と思います。そこで、代替療法などが、そのサポートをすることになるのです。それぞれの詳しい内容は参考書をみていただければよいですが、あくまでもこれらは、標準治療のサポート療法であり、治療の中心になるわけではありません。

私は、主に日常の食事の工夫や運動(ウオーキングなどの有酸素運動+筋トレなどの無酸素運動)が、最も重要な治療サポートと考えており、患者さんへの指導を行っています。

Q4 貴院では、一人一人の治療方針をどのようにして決定するのですか

A4 

患者さんの現在の病状とこれまでの治療歴をもとに、今後の治療方針を決定します。院長のこれまでの臨床経験と最新の医学情報、そしてこれまでの医学研究と臨床研究に基づき(院長の業績参照)、患者さんの希望も取り入れた治療方針を立てます。場合により、腫瘍生検を行い、遺伝子検査やがんの抗原検査を行います(これにより、最新薬物療法と免疫細胞療法を行うことができます)。他院での標準治療と併用する場合もあります。患者さん一人一人に最も適すると考えられる総合的治療を提案いたします。

Q5 高度進行・再発がんでも完治することがありますか?

A5 

ステージII〜IVの進行がんであっても、標準治療(手術、化学療法、放射線治療)のみで完治する率は次第に増えています。しかし、標準治療後に再発したり、標準治療に抵抗性になったがんは、現在の医学では太刀打ちできなくなります。がんのメカニズムでさえまだ10%程度しか解明されていないのです。それでも、稀ながら全身転移の状態にあっても、10年以上生存されている方もおられるのは事実です。これらの患者さんに共通していることは、がんに対する強力な免疫の存在です。

がん細胞は必ず薬剤に耐性になるので、がんの長期的制圧には免疫の存在は絶対なのです。
現在、がん免疫療法の進歩は著しく、免疫チェックポイント阻害剤や、ネオ抗原(樹状細胞ワクチンやCTL療法の材料となる)、CAR-T療法など、遺伝子研究によってもたらされた知見と、これを応用した最新免疫療法にて完治される患者さんは今後も増えて来ると思われます。

Q6 がん拠点病院での標準治療が終了したら緩和医療しかないのですか?

A6 

がん拠点病院では、標準治療(治療ガイドラインに載っている方法)の選択肢が無くなれば、必ずといっていいほど、緩和医療への移行を勧めらます。これは保険の適用になる範囲内での治療がなくなったということにすぎないのですが、治療ガイドライン上のエビデンスのある治療から外れた治療を提供することは、正しい医療ではないと思われているからです。

しかし現在は治療ガイドラインから外れていても、数年後には臨床試験で治療効果(エビデンス)が証明されることはよくあります。日本で標準治療の選択肢が無くなっても、海外ではガイドライン(米国のNCCNガイドラインなど)に上がっているものなど、積極的治療法はあります。
ただ、エビデンス不足の治療を行う上で気を付けなければならないことは、安全性が確立されているかどうかです。安全性の担保がない治療は避けた方がいいでしょう。