がん治療update

18がん抗原特異的傷害性Tリンパ球の新しい誘導法についての報告
Takashi Morisaki:2012.6

癌細胞の持っている腫瘍抗原を認識し攻撃できるTリンパ球を、腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)と呼びます。
従来、このCTLを誘導するためには、1)癌細胞の情報をリンパ球に伝える役割をもつ抗原提示細胞(樹状細胞)をGM-CSFとIL-4というサイトカインを用いて、単球という血液中の免疫細胞から誘導し、2)これに腫瘍細胞の蛋白質などを加えた後、TNFとIFN(α or γ)を加えることにより腫瘍抗原提示樹状細胞を作成し(これが樹状細胞ワクチンとなります)、3)さらにそのワクチンにTリンパ球を加えて、低濃度のIL-2の刺激下で長期間(2~4週)培養することによりCTLを誘導していました。
この場合、患者さんから頂く血液量が多いうえにCTLを作成するまでに計3~4週以上かかる点が欠点となります。また、樹状細胞ワクチンを得るには、アフェレーシスという成分採血装置での長時間かけての採血法が不可欠である点、貧血のある患者さんや全身状態が低下されている患者さんではできない、などいくつかの制約がありました。

今回、我々が報告した方法は、アフェレーシスをしないで、一回の少量採血法でもCTL誘導が期待できる方法です。
具体的には、樹状細胞と活性化リンパ球を同時に誘導する5種類のサイトカインと腫瘍由来蛋白質を培養初期から同時に加えることにより腫瘍抗原を提示した樹状細胞と、リンパ球刺激を同時に開始する方法です。これにより、培養期間が短縮されるのみでなく、従来法の煩雑な培養操作を単純化することが可能になります。
数例の検討では、CTLの誘導には従来法と比較して遜色はない結果が得られましたので、英文論文誌(AntiCancer Research 32:2385-2390,2012)に報告いたしました。

現在この方法でのCTL作成法を用いて免疫療法をしている患者さんは3例と少ないのですが、うち1例は肺を含む全身転移のある御高齢の悪性黒色腫の患者さんで1年近く病状が安定されておられる例があります。今後は、さらに症例を増やして臨床検討を行っていきたいと考えています。

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