がん治療update

16FDAが認可した免疫細胞療法
Takashi Morisaki:2010.11

(※記事内の情報は執筆当時の内容のため現在とは異なる場合がございます。)

新しく開発された治療法や薬剤の安全性と効果を厳密な臨床試験の結果をもとに評価し、治療法として正式に認可を行う米国の機関であるFDA (Food and Drug Administration; アメリカ食品医薬品局)は本年8月、ホルモン療法耐性の前立腺がんの治療法として、免疫細胞療法としては初めてとなる樹状細胞様ワクチンSipuleucel-T(Dendoreon社の商品名Provenge)の臨床使用を認可しました。

 FDAが認可した薬剤(ワクチンなどの生物薬剤を含む)は、がん治療の分野でも世界標準治療の先駆けになる場合が多いのが通例です。今回、数年間にわたる厳密な臨床試験の結果、前述のSipuleucel-Tのホルモン療法耐性前立腺がんに対する有効性が認められた為、これまでは前立腺がんでホルモン療法に効かなくなった場合の世界標準治療は(日本でも同じ)タキソテール単剤またはタキソテールと他の薬剤の併用だったのですが、今後は免疫細胞療法が医学的根拠のある治療として選択肢に加えられたことになります。

 Sipuleucel-Tはアフェレーシス(成分採血)で分離した患者自身の免疫細胞(主に単球)にGM-CSFというサイトカインとPAPという前立腺がん細胞のもつ蛋白質との融合タンパクを加え、細胞ワクチンとして培養し、計3回患者に投与するものです。
この細胞はいわゆる樹状細胞ワクチンとして体内で働き、前立腺がん細胞表面のPAPペプチド(がん関連抗原)を認識してがん細胞を破壊するCTL(細胞傷害性Tリンパ球)を誘導すると考えられています。
臨床効果としてはプラセボと比較して4カ月程度の延命効果が証明されています(プラセボ vs. 樹状細胞ワクチン群;平均生存期間の比較:18.9カ月 vs. 23.2ヵ月, 3年生存率の比較:15% vs. 33%)。

 免疫細胞療法としては初めてFDAに認可された方法なのですが、いくつかの欠点があります。一つはかなり高額な治療であるということです(3回の治療で800万円程度)。もちろん開発と臨床試験に莫大な費用がかかっており、手間と種々のコストがかかる生物製剤だけにある程度は仕方がないにしても、あまりにも高額すぎます。
また、発熱や悪寒などの炎症症状の副作用がかなりの高頻度でみられるようです。

 この他、Tリンパ球を最大限に活性化する抗CTLA-4抗体(Ipilimumab)も近々、がんの免疫療法薬としてFDAが認可する見込みです。
EU諸国においては、ドイツで開発されたカツマキソマブという抗体の使用が、抗ガン剤が効かなくなった癌性腹膜炎に対して昨年認可されました。この抗体医薬は癌細胞とTリンパ球、単球を結合させて免疫細胞の力で癌細胞を破壊するものです。

 このように、免疫療法に関連した薬剤、治療法の効果が明らかにされて国際的にも登場してくるのは喜ばしいことである一方で、分子標的薬と同様やはり高額にならざるを得ない点が問題ですし、これらの治療法で進行がんが完治するものでもなく、科学的に証明された効果と言っても一定期間がんの進行を抑え、生存期間の延長につながるというに留まることも知っておく必要があるでしょう。

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