院長コラム

23再発を免れたがん患者では、体内にがん細胞に対する特異免疫反応が誘発される?
2012.08

2006年12月にイタリアのMontagnaらのグループが、Bloodという雑誌に興味深い報告を行いました。それは化学療法+骨髄移植で治療を施された16名の小児の急性骨髄性白血病患者に関する報告でした。16名中8名が治癒し、残り8名が再発しているのですが、完全治癒した8名全員では骨髄中に自己の白血病細胞に対する特異的傷害性Tリンパ球(CTL)が出現していたことが証明されました。これに対し再発した8名では1名にしかそのような現象(CTLの出現)はみられなかったということです。

この臨床報告により、白血病細胞の完全な排除には腫瘍特異的Tリンパ球の出現が関与するということが示唆されました。特別な免疫療法を併用していないにも関わらず、化学療法+自家骨髄移植後に腫瘍特異的T細胞が自然に誘導されるという臨床的現象は非常に興味深いものです。
この論文から推察されることは、急性骨髄性白血病に限らず、その他のがんでも再発するか否かはがんに対する免疫反応が誘導されるか否かにかかっており、誘導されたCTLがわずかに残存したがん細胞を排除する可能性があることです。

多くのがんでは手術後に一定の確率で再発が起こり得ます。同じステージで同じタイプのがんで、同じ抗がん剤治療を行っていても、再発する人と再発せずに完治する人の違いが何なのかは実はまだよくわかっていません。
もし手術後に残存がん細胞に対する免疫反応が自然に誘導されない場合には、抗がん剤だけでなく腫瘍特異的Tリンパ球療法を追加併用する意義があるのではないでしょうか?実際、米国NCIのロゼンバーグのグループは、標準治療耐性の悪性黒色腫の患者に対し、骨髄非破壊的化学療法(+放射線治療)の後に、腫瘍浸潤リンパ球から誘導したCTL療法を行うことにより、60%以上という非常に高い奏功率が得られたことを報告しています。これらの報告は化学療法後に残存する薬剤耐性がん細胞に対して、強力な腫瘍免疫療法を併用することでさらなる治療効果をあげられる可能性があることを示しています。

Daniela Montegna, Rita Maccario, Franco Locatelli, et al. Emergence of antitumor cytotlytic T cells is associated with maintenance of hematologic remission in children with acute myeloid leukemia. Blood. 2006;108:3843-3850

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