院長コラム

(※記事内の情報は執筆当時の内容のため現在とは異なる場合がございます。)

19がんワクチンの種類と効果
2009.2

免疫力そのものが疲弊し、癌抗原に反応できるリンパ球が少なくなっている進行がんにおいてはワクチン療法のみでの治療効果が低いだろうことは予想はされていたのですが、2004年、癌免疫療法の世界的権威であるスティーブン・ロゼンバーグ(米国国立癌研究所所長)がそれまで報告された世界中のがんワクチン療法の治療効果の低さを示して以来(ペプチドワクチン2%、樹状細胞ワクチン9%)、がんワクチン療法の研究はやや下火に転じました。但しその後、治療対象者が、あらゆる標準治療が効かなくなった進行癌の患者であったことから、むしろその状況で幾ばくかの治療効果が出せたということに新たな評価の目が向けられたのでした。

がんワクチン療法には、その素材として患者さんの癌細胞そのものを凍結破壊して用いる方法、癌細胞の蛋白質を抽出して用いる方法、癌細胞の蛋白質の内、Tリンパ球が認識するペプチド部分(人工癌抗原ペプチド)を用いる方法(ペプチドワクチン)、癌細胞の遺伝子を用いる方法などがあります。
この他、一歩進んだワクチン療法として、患者さんの樹状細胞という免疫細胞(リンパ球に癌の情報を伝える細胞)に、上述の素材を食べさせたりくっつけたりしてワクチンの効力をより高めた癌特異的樹状細胞ワクチン療法があります。
手技が簡単で費用がかからないのは樹状細胞を使わずワクチンだけを皮下に注射する方法ですが、実際これが体内の樹状細胞(リンパ球に癌抗原の情報を伝える細胞)に処理されるかどうかは運任せという欠点があります。
一方、癌特異的樹状細胞ワクチンは、予め樹状細胞に癌抗原を乗せて投与されるので理論上免疫学的効果は確実なのですが、特殊な培養施設や熟練した培養技術が必要な為どこでも実施できるものではなく、手間も費用もかかることが難点です。

いずれのワクチン療法も未だ研究段階で、どのワクチン療法がどういう癌のどういう段階で有効に働くのかなどは今後の臨床結果を待つことになりますが、少なくとも心配されていた自己免疫病などの激しい副作用はないことが分かってきています。

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