院長コラム

(※記事内の情報は執筆当時の内容のため現在とは異なる場合がございます。)

11抗癌剤治療と免疫細胞療法は互いに相容れない治療か?
2005.3

患者さんや御紹介の先生方からよく受ける御質問の中に、抗がん剤治療しながら免疫細胞療法を行うのはあまり意味がないのではないか」とか、「反対の治療をしているようで相乗効果があるとは考えられない」とかいうものがあります。 確かに、抗がん剤が、免疫細胞やそのもとになる細胞ーこれを骨髄幹細胞といいますーの数や機能まで低下させることはよく経験されることです。

しかし、だからと言って抗がん剤治療と免疫療法を併用できないわけではありませんし、お互い異なるメカニズムでがんに作用するために、用いる抗がん剤の種類や併用するタイミングをうまく工夫することにより、ときには相乗的効果をだせる場合が経験されるようになりました。

通常、抗がん剤はがん細胞の中に取り込まれてがん細胞の細胞分裂にかかわる分子や遺伝子を攻撃してがん細胞に自殺を促すことによりその効果をあらわし、特に増殖の盛んながん細胞程効果があります。 抗がん剤の持つ、がんをいったん小さくする効果は免疫細胞治療よりも強力です。
これに対して、免疫細胞療法はがん細胞の外側を包んでいる細胞膜にある異常をキャッチしたり、がんの周りの異常、例えば血管をつくり易い環境などを阻害することにより効果を発揮します。現代の医療技術は免疫細胞を体外で強力に作り変え、これをさらに増殖させたり、新たな機能をもたせたりすることを可能にしました。

従って、あまり抗がん剤の影響を受けていない時期の免疫細胞をアフェレーシスという方法で採取して凍結保存しておけば、抗がん剤で生体内の免疫細胞が一時的に弱った時でも、体外で強力に増やした免疫細胞を投入することにより、抗がん剤とはちがったメカニズムでがんに対抗することができます。

最近のアメリカでの臨床研究の結果では、わざと抗がん剤で白血球数が低下した時を見計らって、あらかじめ体外で増やしておいた、がんを攻撃できる免疫細胞を投与することによって、これらの免疫細胞を体の中により長く留まらせ、がんの組織へもよく集中させることができると報告しています。 むしろ白血球数が正常な場合は、活性化リンパ球を入れてもすぐ失くなるとも言われています。
さらに、最近開発されてきている分子標的薬剤という新しい種類の抗がん剤は、体のなかの免疫細胞の力を借りて その効果を発揮している場合も少なくなく、今後ますます、抗がん薬剤と免疫細胞治療をうまく組み合わせておこなう治療が重要になるでしょう。
そのためには、抗がん剤と免疫のどちらも十分に理解した医師たち(臨床腫瘍専門医)が協力して患者さんの治療にあたることが必要になります。

以上、免疫細胞療法と抗がん剤は、決してお互いに相容れない療法ではなく、タイミングさえ間違えなければ、両者の特徴をうまく調和させて統合的治療になるはずです。

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