院長コラム

25悪性黒色腫(メラノーマ)の治療革命
2013.07

悪性黒色腫(以下メラノーマ)は悪性度の高い腫瘍で、急速な増大と転移傾向のある死亡率の高い腫瘍です。この腫瘍に対しては、抗がん剤はあまり効かないため(標準治療薬のダカルバジンの効果もせいぜい20%程度)、米国ではインターロイキン2(IL-2)や樹状細胞ワクチン、CTL(腫瘍特異的Tリンパ球)などの免疫療細胞療法も治療に用いられてきました。その免疫療法の効果も他のがんに比較すればよい方ですが、決して満足できる効果とは言えませんでした。

しかし、ここ数年来、メラノーマ治療に期待できる新薬の臨床試験結果が次々と報告され、その目覚ましい効果ゆえにメラノーマの治療革命とも言えるほどになっています。

その一つが生体内のリンパ球を活性化させるIpilimumab(イピリムマブ)という抗体医薬(抗CTLA4抗体)で、米国では2011年に臨床応用が認可されています。
腸炎や皮膚炎、肝障害など自己免疫疾患などにみられるような炎症反応が主な副作用で、症状が重篤な場合にはステロイドホルモンが必要になります。腸炎による腸穿孔も1%報告されており、起こった場合にはすばやい対応と治療(緊急手術)が必要です。

その後PD-1抗体、PDL-1抗体という同じような免疫療法薬剤の開発も進み、現在米国では臨床試験の最終段階にあります。これらの抗体医薬はイピリムマブ以上の効果があり、副作用も少ないようです。
メカニズムとしては、PD-1により機能が弱められている体内のリンパ球が活性化され、メラノーマ細胞が破壊されることが推測されています。

もう一つの薬剤はメラノーマ患者のおよそ半数で確認されているがん細胞内のB-RAFとよばれる酵素蛋白の遺伝子変異に対する阻害剤であるVemrafenib(ベムラフェニブ)という分子標的薬剤です。
この薬剤による腫瘍が縮小する率は90%とも言われています。ものすごい効果ではありますが、欠点として開始7か月ごろから薬剤耐性が生じ、次第に効かなくなる場合も多いことがわかっています。
また、B-RAF変異がない症例での使用は逆にメラノーマを悪化させることになります。
副作用は関節炎、日光過敏症、良性皮膚腫瘍の出現などです。

この薬剤が効かなくなった場合には免疫療法へ移行することも可能で、実際ベムラフェニブによりメラノーマの免疫原性(リンパ球の攻撃を受けやすくなる)が上がるという研究結果もでています。
将来的にはベムラフェニブと別の分子標的薬剤(MEK阻害剤やPI3K阻害剤)との併用療法や、前述の免疫薬剤イピリムマブと併用する方法が計画されています。
当院では現在、ベムラフェニブが二人(うち一人は免疫細胞療法との併用)、イピリムマブが一人、すでに治療スケジュールに入っておられます。ベムラフェニブ開始後4か月経過した患者さんでは多発肺転移がほぼ消失した方もおられます。

問題は、現在は保険外薬品のため、その高額な薬剤費用であり、一刻も早い保険適応への認可が待たれるところです。 このようにメラノーマにおける治療の進歩をみるにつけても、将来のがん治療では分子標的薬剤と免疫療法がますますその中心に位置づけられると思われます。

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